元・副会長のCinema Days

福岡県在住のオッサンです。映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

2005-01-01から1年間の記事一覧

「電車男」

2ちゃんねるに掲載された“実録恋愛もどき”の書き込みの映画化ということで、色モノ扱いされても仕方がないような企画だが、どうしてどうして、出来上がった作品は恋愛映画の王道を歩む真っ当なシャシンである。 ラブストーリーの基本設定“ボーイ・ミーツ・…

「ランド・オブ・ザ・デッド」

ジョージ・A・ロメロという監督はコアな映画ファンから神格視されているようだが、私はさほど評価しない。 彼の十八番である“ゾンビもの”は、単なるグロ描写を超えた“別のテーマ”、すなわちその時代のアメリカに対する社会風刺が見どころだという。本作品で…

「柳の木のように」

アジアフォーカス福岡映画祭2005出品作品。 幼い頃に失明して以来、光のない世界に生きてきた大学教授が手術で38年ぶりに視力を取り戻したことで生じる波紋を描くイラン映画。 なるほど、人間というのは勝手なものだ。いわゆる“不惑”をとうに過ぎ、社…

「マナサロワールの愛」

アジアフォーカス福岡映画祭2005出品作品。 兄と弟が数年を隔ててひとりの女性に対しそれぞれ恋愛模様を繰り広げるというインド製のラヴストーリー。ラスト近くにインド人らしい宗教観のようなものが披露されるものの、中身は典型的なトレンディ・ドラマ…

「はるか遠い日」

アジアフォーカス福岡映画祭2005出品作品。 60年代の激動のベトナムを舞台に、意に添わない結婚をさせられた夫婦の波乱の人生を描くホー・クアン・ミン監督作品。本国で50万部を超えるベストセラーとなったレ・リューの大河小説の映画化であるが、ど…

「リンダ リンダ リンダ」

題材だけを見て「スウィングガールズ」のロックバンド版のような痛快熱血青春コメディを予想したならば完全に裏切られる。 主人公達が目指すのは公式なコンテストでも大観衆を前にしてのイベントでもない。文化祭最終日のアトラクション、それも当初はマジメ…

イワン・セルゲーヴィチ・ツルゲーネフ「はつ恋」

本当は中学生・高校生の頃に読んでいなければならない本だが、私は最近読んだ(爆)。 16歳の主人公ヴラジーミルが年上の公爵令嬢ジナイーダに抱く恋心を切々と(回想形式で)綴った一編だ。初恋の甘やかさと、それを凌駕する苦しみと残酷さを丁寧な筆致で…

「ヒトラー 最期の12日間」

(原題:Der Untergang )題名に「ヒトラー」と付いているが、内容はベルリン陥落直前の地下のナチス党本部を舞台に、狂言廻しである女性秘書の目を通して描かれた群像劇である。 何よりブルーノ・ガンツが熱く演じたヒトラーをはじめ、ヒムラーやゲーリング…

「交渉人 真下正義」

意外にも楽しめた。少なくとも「踊る大捜査線2」よりは面白い。 もちろん万全の出来ではなく、ユースケ・サンタマリア扮する主人公が全然有能なネゴシエーターに見えなかったり、暴走する地下鉄試験車にどうやって遠隔装置が取り付けられたのか不明だったり…

「スター・ウォーズ エピソード3 シスの復讐」

観る前から誰でも結末は分かっている。だからストーリーそのものに対する興趣はない。肝心なのは、アナキンがジェダイを裏切って暗黒面に堕ちダース・ベイダーになる、そのプロセスだ。 しかし、ジョージ・ルーカスには“人間ドラマ”は描けない。登場人物の内…

「宇宙戦争」

(原題:War of the Worlds)この映画でのトムくんのギャラは莫大なものであるらしいが、その9割をダコタ・ファニングに譲った方がよい。本作の主役は彼女である。あの精神錯乱一歩手前みたいな表情で絶叫しまくる様子は、それだけで入場料のモトを取れる・…

「フライ,ダディ,フライ」

高校生の娘に大怪我を負わせた極悪学生に仕返ししようと、やたらケンカが強い在日朝鮮人少年に“弟子入り”した中年男の一夏を追う・・・・という、まるで有り得ないムチャクチャな話を違和感なく見せるには、キャラクターを完璧に“立たせる”しかない(笑)。 …

「銀のエンゼル」

舞台は北海道の田舎町、国道沿いのコンビニエンスストアを舞台に、店主の中年男と家族、そして周囲の人々の人生模様を描く。監督は鈴井貴之。 ちょっと辛口な描写もあるが、悪人は一人も出て来ず、みんな収まるところに収まってしまう。主演の小日向文世のキ…

「チーム★アメリカ ワールドポリス」

「サウスパーク」のトレイ・パーカーとマット・ストーンによる、マリオネット(操り人形)アクション大作(笑)。 対テロ国際警備組織“チーム・アメリカ”の“行き過ぎた活躍ぶり”を描く本作、何よりCGなどの最新技術はあまり使わず、昔の「サンダーバード」…

「亡国のイージス」

いくら本物のイージス艦を海自から貸してもらおうと、福井晴敏による原作があまりにも面白いため、よほどの工夫をしないと映画が成功するはずもないが、その意味で本作は失格。 まず監督の人選を誤った。阪本順治は一対一の肉体アクションは得意だが、こうい…

「アイランド」

76年製作のディストピアSF大作「2300年未来への旅」(原題:Logan's Run )と設定・ストーリーが似ている。ついでに言えば主演のユアン・マクレガーと「2300年~」の主人公マイケル・ヨークは共にイギリス人、ヒロイン役のスカーレット・ヨハン…

「いつか読書する日」

監督の緒方明が幼少期を過ごしたという長崎の街の描写が出色だ。名所旧跡などひとつも出てこないが(注:劇中には長崎という文字さえ出てこない)、坂の多い風情のある佇まいが、逆に主人公たちの行き場のなかった鬱屈した心情をうまく象徴している。ロケ地…

「逆境ナイン」

「海猿」でソツのない演出力を示した羽住英一郎監督は、このギャグマンガの映画化でも必要以上のおふざけはナシにして地道にストーリーを追っている・・・・というか、実写版ではそういうアプローチしか出来ないであろう。ヘタに原作通りの悪ノリを“そのまま…

「彼女を信じないでください」

田舎町の旧家の結婚騒動に巻き込まれた仮釈放中の若い女詐欺師を描く韓国製コメディ。こういう映画を観ると、大多数の韓国映画のセールスポイントとは、結局“出演俳優の魅力”でしかないのだということがつくづく分かる。 設定こそプレストン・スタージェスの…

「公共の敵2」

第19回福岡アジア映画祭出品作品。ソル・ギョング扮する前回の型破り刑事が本作では検察官に出世。高校時代の同級生で、今は阿漕な手段で巨大財閥を牛耳る若手エリートとの戦いを描くカン・ウソク監督作。 シビアなクライム・アクションとオフビートな笑い…

「オープン・ウォーター」

これは“少々良くできた「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」”である。小汚いデジカム映像といい、何か起きそうで起きない展開といい、作劇を放り出したような結末といい、魅力のない無名の役者しか出ていないところといい、一発芸的な際物臭さが全編に漂う「…

「ミリオンダラー・ベイビー」(ネタばれあり!)

***(注:ラストを明かしています!)*** 評論家大絶賛のオスカー受賞作だが、私にとっては今回も“しょせん、イーストウッド作品”でしかなかった。 不幸な生い立ちの女子ボクサーが老トレーナーの指導によりめきめきと力をつけ、世界タイトルまで狙え…

「ザ・リング2」

“ナオミ・ワッツって相変わらずイイ女だよなー”という感想しか残らない映画である。 作劇的には話にならない。だいたい前回出所ルートが明確化されたはずの「呪いのビデオ」がどこから出てきたのかが不明。テロリスト的に殺戮を繰り返していた貞子(サマラ)…

「クローサー」

ロンドンを舞台にした、ちょっと複雑で過激な四角関係・・・・という触れ込みながら、最初の10分間で“愛だの恋だのは、嫉妬や喧嘩の逆ベクトルでしかない”とのモチーフが見透かされてしまう点は痛い。 それでも元ネタの舞台版であれば、眼前の俳優たちのシ…

「バットマン ビギンズ」

パート1よりさらにさかのぼった時代を描いた“バットマン誕生篇”である。映画版のシリーズの全部を観ているわけではないが、本作が一番面白いと思う。 「メメント」等のクリストファー・ノーラン監督はキャラクター造形に卓越したものを見せ、コウモリの格好…

三浦展「下流社会 新たな階層集団の出現」

話題になっている新書版の中身が充実していた試しはないが(実例:ベストセラーになった「バカの壁」など)、この書物も実に「軽い」。 何より、消費者をいろんな細かいセグメントに分けてレッテルを貼りまくるという方法論(本書のかなりの割合を占める)は…

「オペレッタ狸御殿」

製作側は“デートムービーだ”と言っているそうだが。それは明らかに間違い。絶対他人には薦められないシャシンである。この映画に途中退場せず最後まで付き合えるのは“鈴木清順作品の特徴”を熟知した手練れの映画ファンか、あるいは熱狂的なオダギリジョーの…

消費税率アップには賛成できない

12月11日付の毎日新聞紙上で、論説委員の玉置和宏が消費税問題に関して“安普請の「消費税衰亡史」”と題し、持論を展開していた。彼は俗に言う財政再建論者であるらしく、消費税率アップに賛意を表明しているように見える。まあ、何を主張しようと自由だ…

「同い年の家庭教師」

最悪の成績で高校を2年も留年したヤンキー野郎の家庭教師をすることになった同い年の女子大生の受難を描く韓国製コメディ。 映画は定石どおり二人が反発し合いながらも仲良くなる過程を描くのだが、似たような雰囲気である「猟奇的な彼女」などとは違い、終…

「木浦は港だ」

韓国の港町・木浦(モッポ)を舞台に、ヤクザ組織に潜入した刑事と若い親分との奇妙な友情を描くコメディ篇で、2004年キム・ジフン監督作。 確かに観ている間は退屈しない。次々と繰り出されるおバカなギャグには呆れつつも笑ってしまうし、主演のチョ・…