元・副会長のCinema Days

福岡県在住のオッサンです。映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

2008-03-01から1ヶ月間の記事一覧

「魔法にかけられて」

(原題:Enchanted )まさにアイデアの勝利と言うべきか。これはセルフ・パロディの極北とも評価したいような出来映えだ。 御伽の国の住人が悪い魔女によって現代のニューヨークに“追放”されるというメイン・プロットからしてシニカルだが、魔法の国の描写が…

ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア「愛はさだめ、さだめは死」

ヒューゴー賞やネビュラ賞の受賞作を含めたSF短編集。まず驚くべきはその文体だ。 翻訳本でも十分伝わるブッ飛んだサイバーパンクな語り口は、読んでいて目眩を起こしてしまう。題材も異星生物の奇態なライフサイクルを独自の視点で描いた表題作をはじめ、…

「ノーカントリー」

(原題:NO COUNTRY FOR OLD MEN)たぶんコーエン兄弟の代表作となるであろう。雑誌などに“終盤が肩透かしである(だからつまらん)”なんてことを書いている批評家がいるが、いったいどこを観ているのかと言いたい。あの拍子抜けに思えるラスト近くこそが、…

アナログ・カートリッジの新製品を試聴した。

先日、市内某家電量販店でメーカーのスタッフを招いてのオーディオ機器の展示会がおこなわれていたので、ちょっと覗いてみた。時間の関係でオーディオ・テクニカ社によるレクチャーしか聞けなかったが、それでもなかなか興味深かった。同社はオーディオアク…

「やわらかい手」

(原題:IRINA PALM)実にまとまりの良い佳編である。ロンドンの下町に住む平凡な老女が難病に苦しむ孫のために、何と性風俗店で“手コキ”の職を得て、しかも売れっ子になり、その“天職”を得た本人も人生に改めて向き合うことになるという、ある意味出来過ぎ…

「父の祈りを」

(原題:In the Name of The Father)93年作品。先のアカデミー賞で主演男優賞を獲得したダニエル・デイ=ルイスの代表作。1974年、北アイルランド。たび重なるIRAのテロに対抗して、当局側は容疑者を一方的に拘束できる法的非常措置を取った。折か…

「宇能鴻一郎の濡れて打つ」

84年にっかつ作品。ロマンポルノの一作として撮られた映画だが、注目すべきは監督。「DEATH NOTE」などでお馴染みの金子修介の、これがデビュー作である。 宇野鴻一郎の小説といえば例の「あたし・・・・しちゃったんです」というようなパープー…

「バンテージ・ポイント」

(原題:Vantage Point )通俗的な活劇編ながら、最近のアメリカ映画らしく時事ネタもしっかりカバーしている点が好印象だ。アメリカ大統領がテロ対策条約調印のために訪れたスペインで、民衆を前にしての演説の最中に狙撃される。その後まもなく大爆発も起…

「ヒーロー・ネバー・ダイ」

(原題:眞心英雄 A HERO NEVER DIES)98年作品。香港の暗黒街を支配する二大組織、権謀術数が得意なペイ一家の腕利きの用心棒ジャック(レオン・ライ)と、残虐なチョイが率いるファミリーに属する殺し屋チャウ(ラウ・チンワン)が主人公。 二人は互いの…

「4ヶ月、3週と2日」

(原題:4 luni, 3 saptamani si 2 zile )賞を取ったからといって良い映画とは限らないということを、如実に示す一作である。87年のルーマニア。望まない妊娠をしたルームメイトのために中絶手術を手配しようと奔走する女子大生(アナマリア・マリンカ)…

「レナードの朝」

(原題:Awakenings)90年作品。舞台は1969年夏、ニューヨーク・サウスブロンクスの神経科病院。そこに30年以上も眠ったままの状態にいる重度の障害者レナード(ロバート・デニーロ)がいた。それが新しく赴任してきた医師セイヤーの献身的研究の結…

「明日への遺言」

藤田まことのワンマンショーみたいな映画である。昭和23年、巣鴨拘置所に収監されていた元東海軍管区司令官・岡田資中将(藤田)は戦時中に撃墜されたB29の乗組員を不当に処刑した罪に問われていた。しかし岡田は、無差別爆撃は国際法違反であり、その…

「ジェロニモ」

(原題:Geronimo)94年作品。通算17本目のジェロニモ映画らしい。脚本ジョン・ミリアス、監督ウォルター・ヒルという顔ぶれから見てヴァイオレンス満載のアクション西部劇だと思ったら全然違った。 映画はいきなり1885年のジェロニモ投降のシーンか…

「迷子の警察音楽隊」

(英題:The Band's Visit)ネタは悪くないのだが、映画自体は全然弾まない。残念な作品だ。90年代の前半、イスラエルに招かれたエジプトの警察音楽隊が、手違いのため目的地とよく似た地名の街に行き着いてしまい、そこで一泊することになり(ホテルはな…

「哀戀花火」

(原題:炮打雙橙)93年中国=香港合作。おそらく19世紀の中国北部。何代にもわたって爆竹の製造販売を営んでいた蔡家はその地方屈指の大富豪。一人娘・春枝は両親が早く死んでしまったため若くして家を継ぎ、皆から“大旦那”と呼ばれていた。豊かだが格…

「カフカ 田舎医者」

同時に観た「頭山」よりも映像のキレ具合は上を行く。山村浩二監督はアニメーションの鬼才と呼ぶにふさわしい。フランツ・カフカによる原作は未読だが、ストーリー展開は不自然ながら、言い知れぬ不安と孤立感とが充満する雰囲気を味あわせてくれたのは、カ…

「頭山」

わずか10分間の短編ながら、山村浩二というアニメーション作家の端倪すべからざる才能を如実に示す一編である。古典落語の「あたま山」の映像化だが、この元ネタ自体が一筋縄ではいかないシュールなものだ。 拾ったサクランボを食べていたケチな男が、タネ…

「Undo(アンドゥ)」

94年作品。作家の由起夫(豊川悦司)は“強迫性緊縛症”という精神病にかかった妻の萌美(山口智子)を回復させようと努力するが症状は悪化する一方。最初はペットの亀や厚い本を縛っていた彼女だが、やがて部屋中のあらゆるもの、形のないものまで紐で縛り…

「君のためなら千回でも」

(英題:The Kite Runner)「チョコレート」などのマーク・フォースター監督作品なので期待したが、どうにも感心できない内容でガッカリした。ソ連によるアフガニスタン侵攻の1年前の78年からタリバン支配下の2000年までを背景に、二人の少年と成長し…

「デイズ・オブ・サンダー」

(原題:Days of Thunder )90年作品。監督がトニー・スコット、主演がトム・クルーズ、といえば「トップガン」を思いだすが、この「デイズ・オブ・サンダー」はそのコンビの2作目である。題材がストックカー・レースであることから、「トップガン」のジ…

「潜水服は蝶の夢を見る」

(原題:Le scaphandre et le papillon)この映画の見所は、健常者(観客)と障害者(主人公)との間の壁を取っ払っている点である。もちろん、実際には健常者にとって障害者の本当の気持ちなんか分かるはずもない。しかし、本作は映像面であたかもそれが可…

「打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?」

95年製作。テレビ作品ながら岩井俊二に日本映画監督協会新人賞をもたらしたドラマだ(ちなみに、この賞は毎年発表されるわけではない。真に有能な新人監督が出現した場合のみ設定される)。 夏休みの登校日。小学6年生のノリミチ(山崎裕太)と水泳競争を…

「長江哀歌」

(原題:三峽好人/STILL LIFE )映像の喚起力に圧倒される映画だ。舞台は長江上流の三峡地区の奉節。代表的な景勝地だが、三峡ダム建設という国家的な大事業のために急激な変貌を余儀なくされている。 雄大な長江の流れの両岸には、へばり付くように民家や集…