元・副会長のCinema Days

福岡県在住のオッサンです。映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

2020-01-01から1年間の記事一覧

当てもなく選んでしまった2020年映画ベストテン。

すでに惰性になった感はあるが、年末恒例の2020年の個人的な映画ベストテンを発表したいと思う(^^;)。 日本映画の部 第一位 なぜ君は総理大臣になれないのか 第二位 本気のしるし 第三位 風の電話 第四位 はりぼて 第五位 his 第六位 37セカンズ 第…

「ストップ・メイキング・センス」

(原題:Stop Making Sense )84年作品。ジョナサン・デミ監督といえば「羊たちの沈黙」(90年)や「フィラデルフィア」(93年)などで知られるが、個人的にはこの映画が最良作であると思う。何より、音楽ドキュメンタリーの分野において新機軸を打ち…

「天外者(てんがらもん)」

2020年7月に惜しくも急逝した三浦春馬の存在感が存分に印象付けられる一作。彼の持つカリスマ性と、観る者を惹き付ける演技力を見ていると、我々は何という逸材を失ってしまったのかという、残念な気持ちで一杯になる。映画自体は(悪くはないものの)…

「夏、至るころ」

青春映画の佳作だと思うが、特筆すべきは本作が極端に年若い監督のデビュー作である点だ。はっきり言って、ベテラン監督の手による作品でも、これより劣る映画はいくらでもある。しかも作風は正攻法で、新人にありがちな気負ったケレンはほとんど見られない…

「水上のフライト」

典型的なスポ根もののルーティンが採用されており、展開も予想通りだ。しかし、この手の映画はそれで良いと思う。ヘンに捻った展開にしようとすると、よほど上手く作らないとドラマが破綻してしまう。また本作では題材が目新しく、紹介される事実もとても興…

最近購入したCD(その39)。

今回は若手女性シンガーソングライター三題。まず紹介するのが、米カリフォルニア州パサデナ出身のフィービー・ブリジャーズ(94年生まれ)のセカンド・アルバム「パニッシャー」。評判になったデビューアルバムの「ストレンジャー・イン・ジ・アルプス」…

「燃ゆる女の肖像」

(原題:PORTRAIT DE LA JEUNE FILLE EN FEU )世評はとても高いが、個人的には少しも面白いとは思えなかった。とにかく、この映画は何か描いているようでいて、その実何も描かれていないのだ。あるのは、小綺麗な画面と思わせぶりな舞台設定、求心力に欠け…

「記憶の技法」

映画の“外観”とヘヴィな内容がマッチしていない。また、話自体に説得力を欠く。キャラクターの掘り下げも浅い。福岡市が主な舞台になっているのであまり文句は言いたくないのだが、もっと上手く作って欲しかったというのが本音だ。撮影から公開まで2年半も…

「シラノ・ド・ベルジュラックに会いたい!」

(原題:EDMOND)これは面白い。芸術に携わる者たちの矜持と、成果物としての演劇の素晴らしさを十分に描き出し、最後まで飽きさせない。それでいて歴史物としての風格があり、優れたコメディでもある。セザール賞では衣裳デザイン賞と美術賞の候補になって…

「ジンジャーとフレッド」

(原題:Ginger et Fred)85年イタリア・フランス・西ドイツ合作。フェデリコ・フェリーニ監督の、後期の代表作だと思う。タイトルとは裏腹に、本作は往年のミュージカルスターであるジンジャー・ロジャースとフレッド・アステアの伝記映画ではない。何し…

「パピチャ 未来へのランウェイ」

(原題:PAPICHA )これは厳しい映画だ。第72回カンヌ国際映画祭における“ある視点部門”に出品されて高く評価されるものの、本国のアルジェリアでは上映が許されていない。この世界には、いまだに自己主張や自由な表現が許されない地域があるのだ。この実…

「マーティン・エデン」

(原題:MARTIN EDEN )キャストの仕事ぶりは良い。文芸大作の雰囲気も備わっている。しかしながら、内容はピンと来ない。脚本が精査されておらず、後半の展開には整合性を欠く。また、何を描きたいのか、物語の重要ポイントが定まっていない印象を受けた。…

「テロルンとルンルン」

上映時間が約50分という小品ながら、訴求力は高い。脚本も演出も適切で、各キャストのパフォーマンスは申し分ない。そして何より、我々が直面している問題の一つに鋭く切り込んでいるあたりは見上げたものである。軽量級ラブコメみたいなタイトルに相応し…

「タイトル、拒絶」

決してウェルメイドな作品ではないが、観る者によってはかなり心に“刺さる”シャシンである。この映画に出てくる者たちは、大半がロクでもない。社会のメインストリームから外れている。しかし、彼らの苦悩と捨て鉢な感情は、少しでも日々の暮らしに対して違…

「ザッツ・ダンシング!」

(原題:That's Dancing)84年作品。歴代の映画に登場したダンス・シーンの傑作場面を厳選し、編集したアンソロジーだ。この手の映画でまず思い出されるのは、74年の第一作から3本作られた「ザッツ・エンタテインメント」シリーズである。本作は一見そ…

「ばるぼら」

クリストファー・ドイルによるカメラワークと橋本一子の音楽を除くと、まるでダメな映画である。とにかく、設定および筋書きがなっておらず、演出も本当に弱体気味だ。どのような意図で作ろうと思ったのか、まるで分からない。脚本の第一稿を提示された時点…

「遠い声、静かな暮らし」

(原題:Distant Voices, Still Lives )88年イギリス作品。しっかりと作られた佳編である。単なる家族ドラマの枠を超え、描く対象は幅広く、掘り下げは深い。監督のテレンス・デイヴィスはこれが長編処女作で、新人にもっとも権威のあるロカルノ国際映画…

「おらおらでひとりいぐも」

退屈な映画だ。とにかく、何も起こらない。もちろん、ストーリーに起伏が乏しくても映像や語り口で面白く見せる映画もあるだろうが、本作には見事に何も無いのだ。これで2時間17分も観客を付き合わせようという、送り手の姿勢は大いに疑問である。また困…

プロ野球セ・リーグの“マイナーリーグ化”を防ぐ方法。

去る2020年11月25日に、福岡ソフトバンクホークスが日本シリーズでセ・リーグ覇者のジャイアンツを4連勝で退け、パ・リーグ球団として初の4連覇を飾った。今年はコロナ禍の関係で優勝パレードは行われないのが残念だが、地元の球団がこれだけ活躍…

「ザ・ハント」

(原題:THE HUNT)出来自体は大したことはないのだが、設定はかなり興味深い。特に、敵役の描き方にはこれまで見られなかった独創性が感じられる。そのため本国では物議を醸したらしいが、銃乱射事件が発生したことを受けての公開延期という事態にも見舞わ…

「本気のしるし」

土村芳が演じるヒロイン像が最高だ。通常、映画に出てくる悪女というのは見るからに蓮っ葉であったり、過度にセクシーだったり、一見おとなしそうだが実は裏表があったりと、とにかく自身を高みに置きたいという野心が滲み出ているものである。だが、本作の…

「罪の声」

手際の良い作劇で、観ている間は退屈しない。キャストの好演もあり、2時間を超える上映時間もさほど長くは感じられなかった。ただし、エピソードを詰め込んだわりには映画の主題(と思われるもの)があまり見えてこない。これはたぶん、主なスタッフがテレ…

宮原坑跡に行ってみた。

先日、福岡県大牟田市にある三井三池炭鉱の宮原坑跡に行ってみた。これは2015年に世界文化遺産として登録された“明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業”のひとつであり、国の重要文化財でもある。同じ福岡県内とはいっても私が住む福岡市と…

「ウホッホ探険隊」

86年作品。脚本が森田芳光で監督が根岸吉太郎という、製作当時の若い才能が初めてタッグを組んだということで話題になった映画だ。内容の方も水準は超えていて、ユニークでありながら完結で清新な印象を与える佳編である。なお、その年のキネマ旬報ベスト…

「彼女は夢で踊る」

観ていて年甲斐も無く、胸が“キュン!”となってしまった(大笑)。我々オッサン層にとっての“胸キュン映画”とは、巷に溢れる壁ドン映画などでは断じてなく、こういうレトロ風味の美学に裏打ちされた、哀愁に満ちたシャシンなのだ。過ぎ去ってしまったもの、…

「朝が来る」

物語の設定とキャストの演技は良いが、展開には難がある。大事なことは描かれておらず、どうでもいいことに尺が充てられている。さらに、内容に対して上映時間が長すぎる。とはいえ、興味を覚えるモチーフは確実に存在しているので、観て損したというレベル…

「イコライザー2」

(原題:THE EQUALIZER 2 )2018年作品。前作(2014年)ほどには面白くない。ただ、これはこれで退屈せず最後まで観ていられる。もともと80年代にアメリカで放映されていたテレビドラマ「ザ・シークレット・ハンター」の映画版なので、シリーズ化…

「スパイの妻」

黒沢清監督作品としては、ひどくつまらない。話の設定はもちろん、展開やキャストの演技なども評価するに値しない。第77回ヴェネツィア国際映画祭での銀獅子賞(最優秀監督賞)の獲得は、いわば“功労賞”と言うべきもので、この映画での仕事に対して贈られ…

「博士と狂人」

(原題:THE PROFESSOR AND THE MADMAN)堂々とした風格のある映画で、見応えがある。手際良くまとまった脚本と、揺るぎない演出。キャストの的確な仕事に、見事な映像と美術。扱う題材も興味深いが、それ以上に観る者の内面を触発する示唆に富んだモチーフ…

「ある画家の数奇な運命」

(原題:WERK OHNE AUTOR )最初の方こそ面白かったが、映画が進むと展開が平板になり、結局は要領を得ないまま終わる。上映時間は3時間を超えるものの、大事な部分は十分に描かれておらず、反対にどうでもいいモチーフに尺が充てられている。かなり世評の…