元・副会長のCinema Days

福岡県在住のオッサンです。映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

映画の感想(た行)

「旅と日々」

監督の三宅唱は、結局は「夜明けのすべて」(2024年)だけの“一発屋”に終わるのではないかと、そんな危惧を抱いてしまいたくなる内容だ。彼は対象を一歩も二歩も引いたところからストイックに捉える、いわばドキュメンタリー・タッチに近い作風を持って…

「トロン:アレス」

(原題:TRON: ARES)ネガティヴな評も散見されるが、私自身は大いに楽しめた。それどころか、この映画の一体どこが酷評に値するだけの不手際があるのか、よく分からない。まあ、感想は人それぞれなので気にする必要も無いだろう。とにかく、最近面白いハリ…

「宝島」

巷では高評価も散見されるが、個人的にはダメな映画としか思えない。3時間を超える上映時間を費やしながら、ほとんど何も語っていないのには閉口するばかり。骨太なメッセージ性も無ければ、突出したキャラクターの造形も見られない。作り手は、この程度の…

「ちょうちん」

87年作品。才能を高く評価されながらも若くして世を去った俳優兼シナリオライターの金子正次は、4冊の脚本を遺している。うち3冊は映画化されたが、本作はその中では最も出来が良い。各キャラクターは十分掘り下げられており、全編に横溢するリリシズム…

「戦う幌馬車」

(原題:THE WAR WAGON )1967年製作の娯楽西部劇。ウエスタンの“お約束”をしっかり押さえた上で、出てくるだけで絵になる面子と、少し捻った筋書きで、最後まで退屈せずに観ることが出来た。当時はこういった低くはないレベルをクリアしたシャシンが常…

「でっちあげ 殺人教師と呼ばれた男」

まず、本作が実話を元にしていることに驚いた。しかも、くだんの出来事は私が現在住んでいる福岡県で起きており、それもさほど昔の話ではないのだ。いかに自分が日頃ニュースもロクにチェックせず漫然と生きているかを痛感し、鑑賞後はしばらく落ち込んだ。…

「罪人たち」

(原題:SINNERS )ホラー映画としては珍しく本国アメリカでは絶賛の嵐で、早くも主要アワードの獲得も噂されているらしい。確かに2時間18分という、この類のシャシンとしては長めの尺をダレることなく最後まで引っ張っていくパワーはかなりのもので、怪…

「ダスト」

(原題:DUST TO DUST, ASH TO ASH)2001年イギリス=ドイツ=イタリア=マケドニア合作。ヴェネツィア映画祭で大賞を獲得したミルチョ・マンチェフスキー監督のデビュー作「ビフォア・ザ・レイン」(91年)は、その清涼な映像美と幻惑的なストーリー…

「ターミナル」

(原題:THE TERMINAL)2004年作品。スティーヴン・スピルバーグ監督による“非ファンタジー・SF大作系”の一本。目立った受賞実績もなく、スピルバーグの仕事の中では地味な印象を受けるが、悪くない映画だと思う。各キャストの仕事ぶりは的確だし、映…

「父と僕の終わらない歌」

薄っぺらい映画だ。評価すべき箇所がほとんど無い。こんな中身の乏しい作品が堂々と全国拡大公開されていまう現状こそが、日本映画のダメな点を如実にあらわしているのだろう。つまりは送り手側の“映画なんて、こんなもので良いだろう”という不遜な態度と、…

「血と骨」

2004年作品。第78回キネマ旬報ベストテン日本映画第2位及び脚本賞、監督賞など、当時はかなりの高評価を得た作品だ。キャストが多彩で、しかも皆大熱演で画面は始終騒々しい。だが、中盤以降は眠気さえ覚えてしまった。理由の一つは、ビートたけし扮…

「ドゥーム・ダーム」

(原題:DHOOM DHAAM )2025年2月よりNetflixから配信された、インド製のアクションコメディ。この国の娯楽作品に付き物のミュージカル場面は出てこないし、3時間を超える作品も少なくない中、本作は108分にまとめられている。ならば物足り…

「テロ,ライブ」

(英題:THE TERROR LIVE )2013年韓国作品。作劇や画面構成に荒さは見られるのだが、緊迫感が全編を覆い、最後まで目が離せないヴォルテージの高さを獲得している。マスコミの欺瞞を取り上げた映画は過去にいくつもあるが、韓国映画が手掛けると(穏や…

「トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦」

(原題:九龍城寨之圍城 TWILIGHT OF THE WARRIORS: WALLED IN)手が付けられないほどの面白さだ。建て付けは昔ながらの香港製アクションドラマなのだが、97年の香港の中国返還以降に存在感を失ってきたこのジャンルを、今一度盛り立てようという製作陣の…

「敵」

これは楽しめた。筒井康隆による原作の同名小説こそ未読だが、彼の作品はけっこう目を通している。そして痛感するのが、筒井の小説ほど映画として仕立てるには難しい素材は無いってことだ。今までも「時をかける少女」のようなジュブナイル系を除く映画化作…

「近頃なぜかチャールストン」

81年作品。監督は岡本喜八だが、彼の全盛期は60年代か、強いて言えば70年代半ばまでだろう。本作もそれほどアピール度は高くない。同監督のファンで、全作品をチェックしたいと思っている映画ファン以外には、現時点ではあまり奨められないと思う。し…

「太陽と桃の歌」

(原題:ALCARRAS)第72回ベルリン国際映画祭で大賞に輝いたヒューマンドラマだが、出来が良いとはとても思えない。もちろん、舞台になっているスペインのカタルーニャ地方の風俗など私は知らないし、ましてやそれに対する映画祭審査委員の思い入れなんか…

「デイ・シフト」

(原題:DAY SHIIFT)2022年8月よりNetflixから配信されたホラー・コメディ。他愛の無いシャシンなのだが、手を抜かずに真面目に仕上げられているので、けっこう楽しめる。まあ、一応この手の映画には付きもののゴア描写は満載であり、それが苦…

「東京日和」

97年作品。去る2024年12月6日に惜しくも世を去った中山美穂の女優としての代表作は何かというと、岩井俊二監督の「Love Letter」(95年)だというのが大方の見方だろう。私もあの映画は傑作だと思うが、彼女のヴィジュアルが最も効果的…

「ティアメイカー」

(原題:FABBRICANTE DI LACRIME)2024年4月よりNetflixから配信されたイタリア製の学園恋愛もの。設定がいかにも“古典的”で最初は面食らったが、屹立するキャラクターとキャストの頑張りで何とか付き合うことが出来、終わり近くにはけっこう盛…

「対外秘」

(英題:THE DEVIL'S DEAL)イ・ウォンテ監督の前作「悪人伝」(2019年)ほどバイオレンス場面は多くはないが、この新作もヴォルテージは高い。作劇には荒っぽいところも見受けられるものの、展開は予測不能で緊迫感があり、エンドマークが出るまで引き…

「タイムカット」

(原題:TIME CUT)2024年10月よりNetflixから配信されたSF編。タイムリープをネタにしているが、プロットには随分と穴がある。そもそも、設定からして納得出来ない点が散見される。ならば面白くないのかというと、そうでもないのだ。展開は…

「トラブル・バスター」

(原題:STRUL )2024年10月よりNetflixから配信されたスウェーデン製のサスペンス編。面白い。何より筋書きがよく練られている。ヒッチコック映画でもお馴染みの“追われながら、真犯人を突き止める話”という普遍性の高い基本線をキッチリとキ…

「天守物語」

95年松竹作品。公開当時に“歌舞伎も知らず泉鏡花も読まない連中の場違いな批評なんて気にする必要はない”ということを、某雑誌で某評論家が書いていたようだが、こんなことを平気で言う者は映画を軽んじた能天気な御仁だったのだろう。歌舞伎も鏡花も知っ…

「ディヴォーション マイ・ベスト・ウィングマン」

(原題:DEVOTION)2023年1月よりNetflixから配信。アメリカ海軍初の黒人パイロットと、彼の僚友である白人パイロットとの友情を描く実録映画。これは出来れば映画館のスクリーンで観たかった。それだけ映像に訴求力がある。正直、作劇は上出来…

「デッドプール&ウルヴァリン」

(原題:DEADPOOL & WOLVERINE)20世紀FOXがディズニーに買収された件を茶化しているあたりは面白かった。ただ、それ以外はまったく楽しめない。要領を得ない話の連続で、観ているこちらはどう対応して良いか分からず、出るのは溜め息だけ。前作(20…

「ツイスターズ」

(原題:TWISTERS)ヤン・デ・ボン監督による「ツイスター」(96年)の続編という設定ながら、ストーリーは繋がっておらず、独立した一本として観ても一向に構わない。ただ、中身がさほど濃くなくて、アトラクションの趣がある点は前作と共通している。も…

「罪深き少年たち」

(英題:THE BOYS)警察の不祥事を描いた実録映画は、最近の日本映画では「日本で一番悪い奴ら」(2016年)ぐらいしか思い浮かばないが、韓国製の本作はその迫真性と感銘度において印象を強烈なものにしている。細かい部分を突っ込めば瑕疵はあるのだが…

「トリガー・ウォーニング」

(原題:TRIGGER WARNING )2024年6月よりNetflixから配信された活劇編。水準を超える出来では決して無いが、少しは興味を覚える箇所があり、結果的にあまり気分を害さずに鑑賞を終えることが出来た。こういうサブスク関連の作品は過度に期待を…

「トランザム7000VS激突パトカー軍団」

(原題:SMOKEY AND THE BANDIT RIDE AGAIN)80年作品。77年製作の「トランザム7000」は本当に面白いアクション・コメディだった。確か地方興行はジョージ・ロイ・ヒル監督の「スラップ・ショット」との二本立てだったと思うが、おそらくは当初“添え…