(原題:THE DOG STARS )映像がとても美しい映画である。ただし、本作の見どころはそれだけだ。肝心の中身はほぼカラッポで、リドリー・スコット監督もいよいよヤキが回ったとしか思えない。原作は米作家ピーター・ヘラーのベストセラー小説とのことだが、私は未読ながらたぶん含蓄のある展開なのだろうと想像はする。とにかく、評価は出来ない。
謎のパンデミックが発生し、大半の人々が命を落とした世界が舞台。生き残った者たちは、凄惨な奪い合いを繰り広げていた。そんな中、パイロットのヒッグは、元軍人のバングリーと共同生活を送っていたが、ある日彼のもとに無線を通じて謎の声が届く。自分たち以外にコミュニティを形成している人々がいることを知ったヒッグは、彼らに会うために愛機を駆って飛び立つ。

要するにこれ、「28日後...」(2002年)から続くシリーズと似たような構図である。しかも、設定としてはあのダニー・ボイル監督作品よりも練り上げられていない。主人公たちを襲う凶暴な奴らはゾンビではないようだが、組織だった様子は見られないにも関わらず、皆似たような格好で馬に乗って弓矢と槍で武装している。まるで西部劇に出てくる先住民だが、どうしてああいう出で立ちなのかは不明。
ヒッグと、途中で知り合ったジャックとシーマの親子は無線の発信元にたどり着くものの、そこは年嵩の女性が支配しているワケの分からない場所。斯様に、この映画は肝心の作品世界の概要がまるで示されておらず、観ていてストレスが溜まるばかり。そもそも、ヒッグがどうしてかつての(地方都市ではない)大都会にまず赴かないのか、納得出来る説明は無い。
ならば活劇場面が優れているのかというと、そうでもなくて凡庸なレベルだ。主演のジェイコブ・エロルディをはじめ、ジョシュ・ブローリンにマーガレット・クアリー、ガイ・ピアース、アリソン・ジャネイ、ベネディクト・ウォンといった顔ぶれも特筆できるものは無し。
とはいえ、エリック・メッサーシュミットのカメラによる自然の風景は目が覚めるほど素晴らしい(ロケ地はイタリアのアブルッツォ州にあるアヴェッツァーノ村)。ハリー・グレッグソン=ウィリアムズの流麗な音楽と併せて、映画の“外観”だけ楽しむには良いかもしれない。
(投稿日時 2026/9/14 7:07:36)