
(原題:THE TROUBLE WITH HARRY)1955年作品。アルフレッド・ヒッチコックが製作・監督した映画の中では、たぶん随一の珍作であり怪作だろう。もちろん、どんなに変化球を効かせたシャシンであろうと鑑賞後の満足度が高ければ文句は無いが、困ったことに本作はちっとも面白くない。要領を得ない与太話が延々と続くだけで、盛り上がりは皆無だ。まあ、ヒッチコックぐらいの実績のある大物ならば、こういうシャレみたいな映画を作っても笑って許されるのかもしれないが、観ている側としては釈然としない。
米国北東部にあるヴァーモント州の森の中で、遊びに来ていた4つになる男の子アーニーが、男の死体を見つける。遺体はハリーという男だったが、村人たちの中にこの男を殺したと疑われるものが数人いた。
ウサギ狩りに来ていた元船長のアルバート・ワイルスは、銃を誤射したと信じ込んだ。中年女のアイビー・グレイヴリーは、森の中でハリーに襲われてハイヒールで殴りつけ、それで相手を死に至らしめたのだと思った。他にもアーニー少年の母親でハリーの2番目の妻だったジェニファー・ロジャースや、彼女を好きな画家のサム・マローにもハリー殺害の動機があった。彼らは都合によってハリーの死体を埋めたり掘り出したりを繰り返す。ジャック・トレバー・ストーリーの同名小説の映画化だ。
死体を見ても驚かない連中ばかりが出てきて面食らったが、これはブラック・コメディの線を狙っているのだろう。しかし、その段取りは上手いとは言えないし、ストーリー展開もスムーズではない。ラストにはハリーの死の意外な真相が明らかになるのだが、カタルシスは皆無だ。ヒッチコック御大には、どう見てもこのようなネタが合っているとは思えない。
ジョン・フォーサイスにシャーリー・マクレーン、エドマンド・グウェン、ミルドレッド・ナトウィック、ミルドレッド・ダンノックといった顔ぶれも大して印象に残らず。ただし、ロバート・バークスのカメラによる、紅葉が映えるヴァーモントの森の風景だけは本当に美しい。それをチェックするだけでも、本作を観る価値はあるかもしれない。なお、バーナード・ハーマンの音楽は及第点には達している。
(投稿日時 2026/7/19 6:01:05)