
この映画を観るのはTV放映・ビデオを含めて5回目ぐらいか。内容については今さらコメントする必要はないほど有名な黒澤明監督1954年の大作。
しかし、回を重ねて観るたびに印象に強く残るのは、圧倒的なアクション・シーンでもなければ効果的な音楽でもない。七人の侍たちが身体を張って守る百姓たちのみじめったらしい小市民ぶりである。彼らは自分たちのことしか考えない。全員参加の戦いを嫌って自分の田んぼだけを守ろうとする連中もあらわれる(これは志村喬の勘兵衛に一喝されるが)し、何かというとヒイヒイ泣くばっかりで自主性がなく、反面、落ち武者を惨殺して手に入れたらしい武具や、食料がないと言うわりには米や酒を隠し持っていたりするこすっからしい面も見せる。野武士一人を10人がかりで竹槍でメッタ刺しにする残虐性。さらに、戦いが終わればそれを忘れてしまったかのように、のんきに田植歌なんぞを歌って侍たちを見送ろうともしない。
三船敏郎扮する菊千代が“百姓はみじめで、さもしい存在だ。しかし、そうさせたのはおまえら侍だ”と叫ぶシーンがある。搾取する侍と卑屈な農民。どちらも褒められたものではない。だが、ここに登場する七人の侍たちだけは、そんな低レベルの大衆や支配階級の武士とは一線を画したスーパーナチュラルな存在として輝いている。
「生きる」(52年)で見せた無能な小市民に対する徹底的な糾弾がここでも示される。“私は役立たずの君達とは違うのだ”と言わんばかりの、英雄・超人だけが活躍する。エゴイズムとその裏返しの虚無性。それを力技で観客に納得させてしまう驚異的な演出力。うーむ。やっぱり黒澤は凄い(これはホメているのである。念のため)。
それにしてもセリフが聞き取りにくいのには閉口した。10数年前のリバイバル公開にあたって音声をリニューアルしたということだが、ついでに字幕スーパーも常時入れた方がよかったのではないだろうか。